[PR]

週刊 税務通信 №3553 平成31年4月22日号掲載原稿 電子申告義務化に向けた留意事項 ~ ベンダーに寄せられた疑問点をQ&Aで紹介 ~

既にご存じの通り、平成30年度税制改正により「電子情報処理組織による申告の特例」が創設され、2020年4月1日以後開始事業年度から大法人が行う法人税等の申告はe-Taxにより提出しなければならないこととされました。
今回の電子申告義務化に伴い、今後多くの大法人で電子申告を実施するための環境整備が必要となることが想定されています。
また、今回の電子申告義務化では法人税申告書別表だけでなく添付書類についても電子データでの提出が必要となることから、既に電子申告を実践している大法人から財務諸表や勘定科目内訳明細書等の添付書類のデータ整備等新たな実務対応が必要になるとのお話しを多く頂戴しています。
今回弊社に寄せられた電子申告義務化に関する疑問点のうち、問い合わせ件数が多くかつ留意すべき項目を取りまとめて以下にご紹介させていただきます。

Ⅰ 電子申告義務化の概要

1.対象税目

法人税及び地方法人税並びに消費税及び地方消費税
地方税の法人住民税及び法人事業税

2.対象法人の範囲

⑴ 法人税及び地方法人税,地方税の法人住民税及び法人事業税
①内国法人のうち,その事業年度開始の時において資本金の額又は出資金の額が1億円を超える法人
②相互会社,投資法人及び特定目的会社

⑵ 消費税及び地方消費税
⑴に掲げる法人に加え,国及び地方公共団体
なお,義務化対象法人には,人格のない社団等及び外国法人は含まれません。

3.対象手続

確定申告書,中間(予定)申告書,仮決算の中間申告書,修正申告書及び還付申告書

4.対象書類

申告書及び申告書に添付すべきものとされている書類の全て
財務諸表や勘定科目内訳明細書も電子申告義務化の対象書類に含まれます。

5.例外規定

電気通信回線の故障,災害その他の理由によりe-Taxを使用することが困難であると認められる場合で,納税地の所轄税務署長の事前の承認が得られれば,申告書及び添付書類を書面によって提出することが可能となっています。

6.届出規定

電子申告義務化の対象となる法人は,納税地の所轄税務署長に対し,適用開始事業年度等を記載した届出書(「e-Taxによる申告の特例に係る届出書」)を提出することが必要とされています。既に届出書の様式も国税庁HPにて公開されています(http://www.e-tax.nta.go.jp/toiawase/qa/gimuka/09.htm)。

7.適用日

2020年4月1日以後に開始する事業年度(課税期間)から適用されます。

Ⅱ 寄せられた疑問点

1.電子申告義務化となる対象法人について

Q1当社は,親会社(資本金の額が5億円超)の100%子会社で,グループ法人税制が適用されています。当社の資本金の額は1億円以下ですが,電子申告義務化の対象になりますか。

A1電子申告義務化の対象外となります。電子申告義務化の対象は,申告主体ごとに資本金の額(又は出資金の額)で判定します。

Q2当社は,連結納税の適用を受けている連結子法人です。連結親法人は電子申告義務化対象法人です。当社(連結子法人)も納税地の所轄税務署長に対し,適用開始事業年度等を記載した届出書(「e-Taxによる申告の特例に係る届出書」)を提出する必要はありますか。

A2貴社が,資本金の額(又は出資金の額)が1億円を超える連結子法人の場合,消費税及び地方消費税で電子申告義務化の対象となりますので,納税地の所轄税務署長に対し,適用開始事業年度等を記載した届出書(「e-Taxによる申告の特例に係る届出書」)を提出する必要があります。
なお,資本金の額(又は出資金の額)は2020年4月1日以後の「事業年度開始の時」の資本金の額(又は出資金の額)で判定します。
一方,貴社が,資本金の額(又は出資金の額)が1億円以下の連結子法人の場合は,電子申告義務化の対象となりませんので,提出は必要ありません。

解説

 電子申告義務化の対象となる法人は,以下のとおりです(法法75の3②,81の24の2③,消法46の2②)。

 イ 事業年度開始時の資本金の額(又は出資金の額)が1億円を超える法人
 ロ 相互会社
 ハ 投資法人
 ニ 特定目的会社

 グループ法人税制では,大法人(資本金の額が5億円超)の100%子会社は,親会社の信用力を背景として資金調達や事業規模の拡大等が可能と考えられること等の理由により,中小企業の法人税の軽減税率(法法66)や交際費の損金不算入の中小企業特例(措法61の4)などの適用に制限が課されています。
 しかしながら,電子申告の義務化に関しては,大法人の100%子会社も含まれるといった規定は盛り込まれていません。したがって,申告主体ごとの資本金の額(又は出資金の額)で判定することになります。
 電子申告義務化の対象法人を一覧にまとめると,次のようになります。

電子申告の義務化の対象法人一覧表

電子申告の義務化の対象法人一覧表

(注)

1 資本金の額等の判定は事業年度開始の日で行う。
2 設立根拠法に

 ① その資本金又は出資金自体について規定されているもの,
 ② その資本金又は出資金の出資について規定されているもの,
 ③ 上記のほか,定款に出資持分に関する定めがあることを前提とした制度が規定されているもの

については,資本金の額又は出資金の額が1億円超か否かで対象を判定します。それ以外の法人は一律義務化の対象外となります。

3 連結納税が適用される法人税申告については,親法人が上記基準に該当すれば電子申告の義務化の対象。

なお,法人税で連結納税を適用している場合でも,消費税等の申告については,連結グループ内の個々の法人ごとに,上記基準により,電子申告の義務化の対象か否かを判定する。

4 外国法人については電子申告の義務化の対象外。

(平成30年8月開催「TKC 電子申告セミナー」国税庁講演資料より引用)

2.添付書類のデータ形式について

富永 倫教さん
富永 倫教さん
株式会社TKC 執行役員
電子申告義務化プロジェクト推進室長
平成14年度の連結納税制度創設当初から、TKC連結納税システム(eConsoliTax)のコンサルティング業務に従事し、以来一貫して 17年間にわたり中堅・大企業の税務部門に対する税務システムのマーケティングやコンサルティング業務を行っている。
平成30年から電子申告義務化プロジェクト推進室長として、電子申告義務化に関するマーケティングを統括している。
従来よりメリハリのある働き方を志向しており、入社以来有給休暇をすべて取得している「働き方改革」の実践者でもある。

Q3財務諸表や勘定科目内訳明細書などの添付書類も電子申告する必要があると聞きました。現在,申告書に添付している書類をPDFで送信すれば良いのでしょうか。

A3法人税申告書に添付する書類である財務諸表,勘定科目内訳明細書はPDF形式でのデータ提出が認められておりません。そのため,PDF形式で送信することはできません。

Q4財務諸表や勘定科目内訳明細書はDVDなど光ディスクでの提出が可能と聞きました。現在,申告書に添付している書類をPDFにして格納すれば良いのでしょうか。

A4財務諸表や勘定科目内訳明細書は,PDF形式でのデータ提出が認められておりません。財務諸表や勘定科目内訳明細書を光ディスクで提出する場合は,CSV形式で格納する必要があります。

解説

 電子申告義務化の対象となる書類は,法令上提出が求められている書類となります。

 法人税確定申告書の場合は,以下の書類が電子申告義務化の対象となります(法規35)。

 1.法人税申告書
 2.法人税申告書別表
 3.財務諸表
 4.勘定科目内訳明細書
 5.法人(会社)事業概況書
 6.適用額明細書
 7.第三者作成等の添付書類

 なお,法令上提出が求められていない書類(例えば「預金残高証明書」等)については,電子申告義務化の対象書類には該当しません。
 また,従来から電子申告する場合は,それぞれの書類について国税庁が定める形式でデータを提出する必要があり,例えば,財務諸表はXBRL形式,勘定科目内訳明細書はXML形式のみ認められていました。
 今回の電子申告義務化に伴うe-Taxにおける利便性向上施策の中で,データ形式の柔軟化が図られ,今後CSV形式のデータでの提出も従来の形式に追加して認められる予定です。
 2018年12月21日に勘定科目内訳明細書及び法人税申告書別表等(明細記載を要する部分)をCSV形式で提出するための標準フォームが国税庁ホームページで公開され,2019年5月以後は勘定科目内訳明細書についてはCSV形式のデータでの提出が可能とされています(http://www.e-tax.nta.go.jp/hojin/gimuka/csv_jyoho2.htm)。
 なお,CSV形式のデータ作成を円滑に行えるようe-Taxホームページに標準フォームが掲載されています。また,e-Taxホームページでは「当該標準フォームを利用し,それをCSV形式に変換したものをe-Taxに添付いただく方式とする予定です。」(http://www.e-tax.nta.go.jp/toiawase/qa/gimuka/25.htm)と案内されています。
 電子申告義務化の対象書類とデータ形式についてまとめると,次のようになります。

(1)② 制度の概要

(平成30年8月開催「TKC電子申告セミナー」国税庁講演資料より引用)

3.法人税申告書作成ソフトで作成していない別表等の提出について

Q5申告書作成ソフトを利用して法人税申告書を作成していますが,別表16関連はそれとは別の固定資産システムから出力したものを添付しています。
別表16関連だけ書面で提出することは可能ですか。

A5e-Taxにより提出可能な申告書別表は,すべて電子申告することになります。
そのため,別表16関連だけ書面で提出することはできません。

Q6当社では,利用している法人税申告書作成ソフトで作成できずスプレッドシートや手書きで対応している別表や添付書類があります。これらを書面またはDVDで提出することは可能ですか。

A6e-Taxにより提出可能な申告書別表や添付書類は,すべて電子申告することになります。そのため,従来法人税申告書作成ソフトで作成していないため書面で提出していた申告書別表等についても電子申告する必要があります。
また,光ディスクによる提出が可能である書類は,法人税法における添付書類のみです。例えば,「財務諸表」,「勘定科目内訳明細書」及び「その他の第三者作成等の添付書類」のほか,別表の一部(CSV形式で提出可能な部分)が対象です。

解説

 電子申告義務化の対象となる書類は,Q4の解説で紹介しているとおり,法令上提出が求められている書類となります。

 法人税確定申告書の場合は,以下の書類が電子申告義務化の対象となります(法規35)。

 1.法人税申告書
 2.法人税申告書別表
 3.財務諸表
 4.勘定科目内訳明細書
 5.法人(会社)事業概況書
 6.適用額明細書
 7.第三者作成等の添付書類

 これらの書類はすべて電子申告することとされており,一部を書面にて提出することは認められません。また,光ディスクによる提出は,e-Taxによる提出ができない場合(添付書類が大量にある場合等)となります。
 国税庁HP「よくある質問(Q&A)」にも以下の記載があります(http://www.e-tax.nta.go.jp/toiawase/qa/gimuka/27.htm)。

 光ディスクによる提出が可能となる書類は,法人税法における添付書類のみで,例えば,「財務諸表」,「勘定科目内訳明細書」及び「その他の第三者作成等の添付書類」のほか,別表の一部(CSV形式で提出される部分)が対象となります。したがって,申告書全体を光ディスクに格納して提出することはできません。  なお,光ディスクによる提出は,平成32(2020)年4月以後の申告から利用可能とすることを予定しております。

※e-Taxを利用した場合は,申告書全体の提出が可能ですので,光ディスクによる提出は,e-Taxによる提出ができない場合(添付書類が大量にある場合等)に利用をお願いします。

4.顧問税理士との役割分担について

Q7当社では,申告書別表は顧問税理士が作成した上で所轄税務署長宛てに提出し,添付書類(財務諸表や勘定科目内訳明細書等)は当社が作成した上で顧問税理士とは別に当社が所轄税務署長宛てに提出しています。この場合,電子申告義務化にはどのように対応すれば良いでしょうか。

A72つの対応方法が考えられます。

1.顧問税理士に貴社が作成した添付書類のデータを送付し,顧問税理士が添付書類のデータも含めて代理送信にて電子申告する。
この場合,電子申告実践の環境が顧問税理士に必要となります。

2.従来通りの役割分担で顧問税理士が申告書別表のみを代理送信にて電子申告し,その後,納税者(貴社)が添付書類を追加送信で電子申告する。
この場合は,電子申告実践の環境が顧問税理士と納税者(貴社)両方で必要となります。

解説(図解)

現状
対応1
対応2

Q8当社では,電子申告義務化に伴い,税理士の代理送信による電子申告で対応することを計画しています。この場合,留意すべき事項等はありますか。

A8税理士の代理送信による電子申告については,以下平成18年12月27日の国税庁告示第32号にて告示されており,税理士法第2条第1項第2号に規定する税務書類の作成を委嘱した税理士が可能となっています。
したがって,税務書類の作成を委嘱していない場合は,税理士であっても代理送信による電子申告はできませんので,ご注意ください。検討にあたり,税理士との顧問契約内容等を一度確認することをお勧めします。

解説

 大法人では電子申告の実践が中小法人と比較して進んでおらず,すべての税目で書面による申告である法人や,また,例えば消費税のみ電子申告で他の税目は書面による申告等,電子申告の実践が一部の税目のみにとどまっている法人も数多くあるようです。そのため,今後多くの大法人で電子申告を実施するための環境整備が必要となることが想定されています。電子申告を実施するための環境整備を検討することとあわせて,特に規模がそう大きくない法人を中心に,税理士の代理送信による電子申告で対応することを検討するケースも少なからず見受けられます。
 ご存じのとおり,平成19年1月より税理士が代理で送信する場合には,本人(代表者)の電子署名が省略可能となっており,特に税理士関与の中小企業の電子申告実践件数の爆発的な増加(法人税申告での利用率が平成18年度3.9%から平成19年度19.6%と5倍に増加)に繋がったことは記憶にあるところです。
 税理士の代理送信による電子申告については,以下平成18年12月27日の国税庁告示第32号にて告示されており,税理士法第2条第1項第2号に規定する税務書類の作成を委嘱した税理士が可能となっています。
 そのため,税務書類の作成を委嘱せずに電子申告の代理送信のみを実施することは認められませんので,ご留意ください。

e-Taxの利用率の推移とこれまでの取組

(平成30年8月開催「TKC電子申告セミナー」国税庁講演資料より引用)

以下,「国税庁告示第32号」を参考として引用します(http://www.e-tax.nta.go.jp/horeito/horei4.htm)。


電子署名等を要しない者を定める告示

 国税関係法令に係る行政手続等における情報通信の技術の利用に関する省令第5条第1項第2号に規定する国税庁長官が定める者を定める件(平成18年国税庁告示第32号)

 国税関係法令に係る行政手続等における情報通信の技術の利用に関する省令(平成15年財務省令第71号)第5条第1項第2号の規定に基づき,同号に規定する国税庁長官が定める者を次のように定め,平成19年1月4日から適用する。

平成18年12月27日
国税庁告示第32号

 国税関係法令に係る行政手続等における情報通信の技術の利用に関する省令(以下「省令」という。)第5条第1項第2号に規定する国税庁長官が定める者は,次に掲げる者とする。

一 電子情報処理組織(行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律(平成14年法律第151号)第3条第1項に規定する電子情報処理組織をいう。以下同じ。)を使用して省令第7条第2項に規定する計算書に係る申請等(同法第2条第6号に規定する申請等をいう。以下同じ。)を行う者

二 申請等(国税通則法(昭和37年法律第66号)第123条第1項の規定による請求を除く。)を行おうとする者が,税理士法(昭和26年法律第237号)第2条第1項第2号に規定する税務書類の作成を委嘱し,当該委嘱を受けた者が電子情報処理組織を使用して当該申請等を行う場合における当該税務書類の作成を委嘱した者
(以下省略)



株式会社TKC

株式会社TKCでは、中堅・大企業向けに法人電子申告システム(ASP1000R)、連結納税システム(eConsoliTax)を提供しています。
現在、年商トップ100社のうち87社でシステムを利用して頂いており、全国59万社のお客様の電子申告実践を支援しています。
今回の電子申告義務化に伴い、「電子申告義務化対策セミナー」と「TKC電子申告システム体験会」を毎月開催しており、電子申告義務化対応に向けた取組みを支援しています。

電子申告に関するセミナーやノウハウ資料については、
https://www.tkc.jp/consolidate/lp/denshishinkoku?zeikentech0416

TKC電子申告システムに関するお問合せは、
https://www.tkc.jp/consolidate/asp1000r/inquiry?zeikentech0416

お電話でのお問合せ
電子申告義務化プロジェクト 米森(よねもり)、手島(てじま)
03-3266-9055

株式会社TKC 執行役員 電子申告義務化プロジェクト推進室長 富永 倫教
[PR] 制作:税務研究会企画広告チーム
©2019 Zeimukenkyukai Corp.